おじさん世代向けHipHop入門講座(その⑦)東西抗争の始まり

音楽

ギャングスタ・ラップはアメリカ各地に伝染して広がっていきながら、音楽的にも進化していきます

LA発:G-Funkの飛躍

『Ruthless Records』


イージー・イー(Eazy-E)
本名:エリック・リン・ライト(Eric Lynn Wright)

麻薬売買で稼いでいた彼は、1980年代中期に『Ruthless Records』を設立

アイス・キューブとドクター・ドレーらとN.W.Aを結成

1988年8月8日:スタジオ・アルバム
ストレイト・アウタ・コンプトン( Straight Outta Compton)』
をリリース

ドクター・ドレー(後にビーフ関係になってしまったが)やボーン・サグスン・ハーモニーらをヒットさせ 敏腕なプロデューサー&実業家っぷりも広くアピール

1995年3月26日:エイズが原因で突然の死を迎えることに

ドクター・ドレーとビーフをしていたときにアンサーとしてリリースした強烈なディストラック

1989年に『Ruthless Records』と契約した

アバブ・ザ・ロー(Above the low)

ファンク・ミュージックをスローダウンした新しいサウンドを開発

G-Funk

【ギャングスタ・ラップ】×【Funk】=<G-Funk>

1992年にはドクター・ドレーが新レーベル

Death Row Records(デス・ロウ・レコード)

からアバブ・ザ・ローのサウンドに影響を受けて更に洗練させた
デビュー・ソロ・アルバム『The Chronic』をリリース

このアルバムが<G-Funk>の始まりと言われています

このG-Funkは、歌詞の内容はギャングスタ・ラップと同様に過激なのですが、サウンドがゆったりしていることもあって新しいファン拡大につながります

映画『ジュース(Juice)』(1992年)


ラップ・ミュージックにのせて描く青春バイオレンス・ムービー
人種差別に対する怒り、社会に対するやり場のない憤り、嫌悪、苛立ちなどの黒人問題を描いた映画で 2Pacが出演

Snoop Dogg – Doggystyle (1993)

G-Funkの最高傑作と言われるスヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)のデビュー・アルバム『Doggystyle』はビルボード・アルバム・チャート初登場1位を獲得

スヌープ・ドッグのキャラもあってG-Funkはメジャー音楽シーンの中心に躍り出ます

ウォーレン・G(Warren G)- 『Regulate』(1994年)

G-Funkを更にメロウにさせて大ヒット

NYラップ・シーンの巻き返し

西海岸に押され気味であった東海岸

ヒップホップ発祥の地としての巻き返しが起こります

モブ・ディープMobb Deep

ギャング・スターGang Starr

M.O.P.

ニュースター誕生

ニューヨークのラップ・シーンも多くのアーティストが浮上してきましたが、LAのスヌープ・ドッグほどのアメリカ全土に大きな影響を与えるほどのスターが存在していませんでした

そこでNYのプロデューサ軍団が集結して制作されたアルバム

『illmatic』(1994年)by Nas

当時Nasは19歳
このアルバムはHipHopの完成形とも呼ばれて
「流石!発祥地ニューヨーク」と各方面で大絶賛されます

ニューヨークのゲトーの現実を語り掛けます

東西抗争の始まり

1993年
ブルックリンのラッパー:ビギーことノトーリアス・B.I.G.(The Notorious B.I.G.)は、仕事でロサンゼルスを訪れた際に地元のドラッグディーラーを介して2Pacと出会い、その後二人は友情を育みます

ビギーはデビュー前に不安になったので、2Pacにマネジメントを依頼します

当時すでにスターであった2Pacは多忙でもあったこともあり、その依頼を断ります

「ショーン”パフィー”コムズ (Sean “Puffy” Combs)に任せておけば大丈夫」

ショーン・コムズ(Sean Combs, 本名: Sean John Combs)

別名: ショーン・パフィ・コムズ(Sean ”Puffy” Combs) パフ・ダディ(Puff Daddy) P・ディディ(P. Diddy) ディディ(Diddy)

音楽プロデューサー・作詞家・アレンジャー・ファッションデザイナー(ファッションブランド「ショーン・ジョン」(Sean John)など経営者)・俳優・MC

バッド・ボーイ・エンターテインメント(Bad Boy Entertainment)の最高経営責任者

バッド・ボーイ・レーベルとしての初アルバム:Craig Mack – Project: Funk Da World

後に、バッド・ボーイがレーベルとして、またビギーがアーティストとして、急激な成功を収めてしまったことは一部の人々の中に反感を生み出すことになり東西抗争の原因のひとつでもある


1994年9月18日
『Bad Boy Records』からノトーリアス・B.I.G.(The Notorious B.I.G.)がデビュー・アルバム『レディ・トゥ・ダイReady To Die)』をリリース

1994年11月30日
2Pacは、ビギーがレコーディングしているタイムズスクエアにあるクワッド・レコーディング・スタジオを訪れ、強盗襲撃事件(頭部に2発、股間に2発、手に1発もの銃弾を被弾)に巻き込まれた

2Pacは一命を取り留めたが、この事件を仕組んだのは?

ビギーとショーン“パフィ”コムズだと思い込んでしまった

2Pacの予想に付け足すようにビギーがリリースした楽曲

『Who Shot Ya?(誰がお前を撃った?)』

内容が完全に銃撃された2Pacをディスしているような内容であった

後にビギーとショーン“パフィ”コムズは

あの曲は2Pacが襲撃される前に既にレコーディングをしていた曲だ」と弁解したが後の祭り

その後、個人単位ではなく、他のアーティストも巻き込むほど悪化する出来事が起こった

デス・ロウCEOシュグ・ナイトの問題発言

1995年8月3日
『The Source Awards』の授賞式
映画「Above the Rim」としてベストサウンドトラックを受賞したシュグ・ナイトが

2Pacよ常に周りに注意しておけ。俺らはお前の味方だからな。そしてアーティストやスターになりたいけど、プロデューサーがやたら曲中に登場したり、MVにてずっと踊ってたりするのが嫌なやつはデス・ロウにこい。

ニューヨークの会場で全国放送されている授賞式で、ニューヨークを代表するプロデューサーである ショーン“パフィ”コムズをディスった

さらにドクター・ドレー(Dr. Dre)がベストプロデューサー賞を受賞した時、観客からはDJ Premierが受賞しなかったことにブーイングの声も聞こえる中、スヌープ・ドッグがマイク・パフォーマンスを行った

お前ら東海岸はドレーとスヌープにリスペクトがないのか!? お前らは西海岸に愛がないのか!?

「東海岸VS西海岸ヒップホップ抗争」の幕が切って落とされました

Bad Boy Records vs Death Row Records

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